1.準備する契約関係の書類
フリーランスになると、クライアント様との契約の際に、複数の書類の提出が必要になります。
その流れを簡単に説明します。
① 「見積書」を取引先に提出をして予算や期間の了承を得る
② 取引先より、予算や期間を了承した旨の「注文書」が発行される
③ この「注文書」の業務を引き受ける旨の「注文請書」を作成する
④ 「納品書」および納品物を取引先に提出する
⑤ 納品物に対する報酬の「請求書」を取引先に提出する
⑥ 「請求書」に記載された報酬が取引先からフリーランスの銀行口座に振り込まれる
⑦ 入金確認をする
1.1.見積書
「見積書」を端的に言うならば、作業に関して必要な事項(報酬金額や納期など)の契約内容について、クライアント様と詳細に取り決めるための書類のことです。
主に下記の3つのケースにおいて「見積書」が作成されます。
(1)クライアント様からの「見積依頼書(報酬金額や納期などが記載してある書類)」をいただき、それに従って作成するケース
(2)クライアント様より口頭などで提示された「報酬金額や納期など」に従って作成するケース
(3)クライアント様に対して「報酬金額や納期など」の条件を、フリーランスさん側から提示をし、諸条件を交渉するための材料として「見積書」を作成するケース
1.2.注文書(発注書)
「注文書(発注書)」とは「コンテンツ、各種サービス、成果物(完成品や部品)を発注する意思表示を書面に記載した書類」のことです。ここで言う発注とは「作り手に注文をして、コンテンツ、各種サービス、成果物(改完成品や部品)の作成を依頼すること」をあらわしています。
ですので「注文書(発注書)」は、納品物を注文する側が作成することになっています。
しかしながら、現実的にはクライアント様とフリーランスさんとの仕事の付き合いが長くなればなるほど、口頭での合意、すなわち口約束という言葉のみでの取引をしていくケースが増えていきます。
この口頭での約束が場合によっては、トラブルを引き起こすことが稀にありますので、トラブルの芽を事前に摘むためには、この取引がクライアント様からの発注で行われている旨の証拠を書面、すなわち「注文書(発注書)」にきちんと記載することが重要です。
また、下請法において、「注文書(発注書)」の作成は義務付けられていますので、忘れずに受け取るようにしましょう。
1.3.注文請書
「注文請書(ちゅうもんうけしょ)」とは「作り手がクライアント様からの注文を受けて、コンテンツ・各種サービス・成果物(完成品や部品)などを作成すると承諾すること」を記載し、証明する書類のことです。
したがって「注文請書」とは、作り手が発行して、クライアント様に提出する書類のことをさします。
なお「注文請書」とは、正式な請負契約書と同等の書面になります。
したがって、収入印紙を貼る必要があります。
ですから、下記の2つのルールに則って収入印紙を張り付けてください。
(1)1万円以上の契約の場合は、200円~の収入印紙が必要になります。
(2)1万円未満(消費税抜き)の契約の場合は、非課税なので収入印紙は不要です。
また、収入印紙には割印を押印する必要があります。
その場合に使用する印鑑は、認印でも角印のどちらでも良いとされています。
(番外編)
収入印紙を添付して印紙税を支払う必要のないケースも存在します。
それは、PCで契約書を作成してPDFデータにして、ネット上で送信して締結する場合のことです。
紙の文書の交付に当たらないので、収入印紙の添付が不要になります。
ですので、結果的には印紙税の分のコスト削減になります。
その一方で、メール上での契約の締結は、過去には社判の有無などの不安な要素も多かったです。
しかしながら、昨今の特殊な経済下で、電子印鑑の存在が認められました。
また、電子印鑑の法整備もきちんとされました。
結果的に、正式な契約を締結する際にネット上でもOKになりました。
このケースではさらに節税メリットもあるので、クライアント様もネット上での契約締結も選択肢にいれてくる時代になりました。
1.4.納品書
「納品書」とは、クライアント様からの指示で作った納品物を納品する際に、同時に送付する書面のことです。
「納品書」を作成するメリットは、主に下記の2つがあげられます。
(1)「納品書」に納品物の内容が記載されているので検品がスムーズにできる点
(2)「納品書」をもとに、報酬支払の事務の準備ができる
また、そもそも「納品書」は正式な証憑です。ですから、納品物を納品された会社において、
保管義務に則って「納品書」を保管する必要性もあるのです。
1.5.請求書
「請求書」とは、「納品したコンテンツ、各種サービス、納品物(完成品や部品)等に対して、報酬を受け取るために、フリーランス側からクライアント様に送付する書面」になります。
すなわち、「請求書」とは、フリーランスさんがクライアント様から報酬のお支払いを受けるために必要不可欠な書類であるといえるでしょう。
「請求書」を作成しなければならない理由としては下記の2つが挙げられるでしょう。
(1)トラブルや勘違いの防止のため
商取引において、請求書に記載のある支払期日になっても入金が確認できないなどのトラブルや、また入金金額が少ないなどの勘違いが生じないとも限りません。
ですから、商取引の基本である「請求書」を発行しておく必要があります。
それは「請求書」の発行により「納品したので、報酬を請求しますとの証明」をすることができるからです。
その場合には、「請求書」を発行した旨をクライアント様にお伝えして、再度、お振込みのお願いをすることができます。
(2)クライアント様とフリーランスさんとの間で商取引の事実があった証明をするため
クライアント様から、毎月に1回、報酬を受け取っているフリーランスさんが存在するとします。
もし、税務調査などが行われた場合、請求書があることで、クライアント様とフリーランスさんとの間に商取引があった事実を証明することができます。
このように税務署対策としても請求書の発行が必要不可欠となるのです。すなわち、偽装請負などの誤解を受けずに済むのです。
※インボイス制度が施行される令和5年10月1日以降の請求書には、適格請求書発行事業者の「登録番号」の記載が必要になります。
ちなみに適切な「請求書」を作成する際に参考になるサイトとしては、国税庁HPを参考にしてください。
(参考引用:国税庁HP>請求書等の記載事項や発行のしかた)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6625.htm